【中小企業向け】余剰資金の資産運用
中小企業における余剰資金の運用は大きな経営課題のひとつです。
近年、企業規模を問わず資産の有効活用方が経営課題となる法人が増えています。
「財務は健全だが、何かあったときのために」「今は事業への投資のタイミングではない」等の理由から内部留保が増え続け、余剰資金が積み上がり経営効率が悪くなっているケースです。
上場企業においては、2023年3月には東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)の低迷する企業に対して改善策を開示・実行するよう要請したことで資本効率向上の動きが見られますが、チェック機能がない中小企業では目立った改善は見られません。
中小企業においては資産運用の経験や知識が無いという理由から余剰資金の運用を敬遠していることが多く、経験や知識の有無によって大きな差が出ているのが現状です。
実際に余剰資金を運用している中小企業はどんな投資先を選んでいるのでしょうか。具体的には、①債券②仕組債③不動産④株式・投資信託等が挙げられます。
本記事では、中小企業の経営者様向けに、会社の余剰資金の運用方法について詳しくお伝えすることに加え、余剰資金運用の相談先もご紹介します。
最後までご覧いただけますと幸いです。
目次
法人で資産運用は必要か?
本来、法人の余剰資金は日々の決済に必要な運転資金であり、将来の設備投資やM&A、人材投資など成長するための待機資金であり、借金の返済原資です。また、一定水準以上の現金を保有することで企業の価値向上にも繋がると言われています。
これらを鑑みても余剰資金が残る場合、そのまま現金で置いておくのは経営資金効率の低下を招きます。
そこで考え得るのが法人口座での資産運用です。
多くの経営者が「本業以外で稼ぐなんてけしからん」「投資は損する」など、悪いイメージを持っているのは確かです。
しかし、パンデミックや天災などの影響で経営環境が悪化する可能性もあります。法人としての資産形成も万が一の備えになるのではないでしょうか。
個人との運用方針の違い
法人と個人の運用方針の大きな違いはリスク許容度です。個人であれば、ハイリスク・ハイリターンの投資を中心に行い、万が一大損をしても問題ありませんが、中企企業でそれは許されません。あくまで、中小企業の余剰資金は会社の経営効率を上げるべきものであるため、安定運用が欠かせません。
※キャッシュフローや余剰資金が潤沢である大企業は除く
具体的な余剰資金の投資先
では、法人の資産運用方法にはどんなものがあるのか解説していきます。
【堅実を求めるなら】債券
先ほども述べたように、中小企業の資産運用は安定運用が欠かせないため、債券投資が中心になると思います。
債券とは、国や地方自治体、事業会社などが発行するもので、代表的なものに国債や社債があります。簡単に言うと、「国や会社にお金を貸す代わりに利息を得る」という方法です。
概ね半年に一度金利収入があることと、発行体が破綻しなければ償還時には額面通り戻ってくる仕組みになっており、元本割れの可能性が低く安定的な運用が可能です。
また、マーケット環境によっては値上がり益を獲得することもできるため、魅力的な投資先となっています。
一方、デメリットもあります。
国債など円貨建ての場合、満足のいく金利収入が得られない可能性があります。一般的に定期預金よりも高くはなりますが、それでも決して驚くような水準ではないと思います。
また、償還までの期間が長い点にも注意が必要です。中途換金の場合元本は保証されないため、全て同じ債券を購入せず期間が違うものに分散させるのもひとつです。
他には、米ドル建てなど、外貨建債券に投資することで国内債に比べ高い金利収入を獲得する方法もあります。
ただし、為替の影響を受けるため、高い利回り及び為替差益を得られる可能性もありますが、円高に振れ為替差損が出る可能性には注意が必要です。
【リスク許容できるなら】仕組債
最近世間を賑わせているのが仕組債です。
仕組債とは債券の一種ではありますが、先ほど解説した国債や社債とは大きく性質が違うものです。富裕層を中心に人気のあるもので、オプション等のデリバティブを組み入れた債券です。代表的なものに「EB債」や「リンク債」があります。
仕組債の人気がある理由はずばり、「高い利回り」です。条件によっては年間利回り20%以上のものも多くあります。期間は国債や社債よりも短いにも関わらず金利は高いことに魅力を感じるのは当然です。
しかし、繰り返しになりますが、仕組債は普通の債券ではありません。
仕組債はハイリスク・ハイリターンに分類され、高金利が得られる一方大きなリスクを抱えることになります。
代表的なEB債(他社株転換可能債券)を例に出すと、期間内に株価が一定水準を下回らず償還を迎えれば元本は額面通りに戻り、かつその間に高い金利収入も享受できます。
しかし、期間内に株価が一定水準を下回った場合等は、償還時に現金ではなく株券で償還され、大きな損失が発生します。
いずれにせよ、商品の仕組みが複雑なため、投資初心者や説明を聞いても理解できないのであればお勧めできる商品ではありません。
【安定的なインカム収入】不動産
マンションやアパートに代表される不動産投資は、会社経営者にとって非常にポピュラーな資産運用方法かと思います。
優良物件を入手できれば毎月安定的に家賃収入があり、ひとつの事業に見立て安定的な事業収入にすることも可能です。また、日本において家賃はある程度長いスパンで変わらないケースが多く、中長期で安定した収入を目指すことができます。
更に、不動産は現金や有価証券に比べ相続対策にも効果的であり、安定収入はもちろん節税にもつながるというメリットがあります。
しかし、そんな不動産投資にもデメリットや注意点はあります。
ひとつは、換金性が低い点です。早急に資金を工面する必要が出た際、売却から現金化まで多くの時間を要します。一般的に、募集→契約→決済までどんなに早くても1か月程度はかかると思います。その間、銀行や不動産会社と打ち合わせも必要になるため、短期的に必要な資金の振り分け先には向いていません。
もうひとつは、不動産投資には思った以上にコストがかかる点です。
例えば、マンションの1室を購入し賃貸する場合を想定します。
まず、単発的に購入時の仲介手数料、賃貸する際の募集会社への広告費(無いことも多いです)が発生します。その後、月々のランニングコストとして管理費・修繕積立金、管理会社への管理料もかかり、更にエアコンや給湯器など設備の故障に対する修理費などのことも考慮しておく必要があります。特に、概ね10年過ぎた辺りからあちらこちらに故障が出てくることが多いので、築古物件の購入時には注意が必要です。
【気軽に購入可能】株式・投資信託等
今は株式、投資信託ともにインターネット証券等で簡単に購入ができます。
株式投資であれば、値上がり益の獲得もしつつ、同時に配当収入を得ることもできます。
マーケット環境が良ければ短期的に資産を拡大させることも夢ではありません。
また、投資信託は簡単に世界中の株式、債券、不動産、原油や金など商品等に分散投資ができ、それぞれ少額から購入可能です。
しかし、上場株式・投資信託ともに銘柄数は数千種類あり、投資に不慣れな場合、自分自身で投資先を選定するのは難しいかもしれません。
インターネット上に多くの投資情報は溢れていますが、それら全てが正しい情報とは限りません。誤った情報や不確かな情報も多く出回っており注意が必要です。
【番外編】GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオは?
さて、他の経営者はどんな運用をしているのかも気になると思います。
今回は経営者ではありませんが、私たちの年金の一部を運用する世界最大の年金運用機関、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がどんなポートフォリオで運用しているのかご紹介します。
GPIFが運用する年金マネーは2021年12月時点で約194兆円以上に上り、世界最大規模となっており、投資の割合は「国内債券」「外国債券」「国内株式」「外国株式」がそれぞれ25%ずつと定めています。世界最大の公的年金運用機関が8割弱リスク資産に投資を実行しており、低金利政策が続く日本ではこの運用方法は参考になるのかもしれません。
もちろんリスク資産に多く投資していることから、四半期や半年、1年単体で見ると収益がマイナスになっていることもありますが、長期的には運用が好調であることは間違いありません。つまり資産の分散を図りつつ、長期にわたり運用することがいかに重要かわかるかと思います。
相談先に困ったら
ここまで中小企業の余剰資金の運用方法について解説しましたが、理解しにくい点や不安な点があれば資産運用のプロに相談することをお勧めします。
ここでは近年注目を浴びるIFAについて解説します。
IFAの特徴
IFAとはIndependent Financial Advisor”の略で、金融アドバイザーの業態の一種です。
その大きな特徴は、既存の金融機関から独立した経営方針の下、中立的な立場で顧客の立場に立った金融アドバイスができる事業形態にあります。
少し分かりにくいため下記に特徴を紹介します。
中立的な提案
多くの証券マンや銀行マンは会社に所属している立場のため、目標やノルマを抱え、更に会社の方針に従う必要があります。そのため、本当の意味で顧客本位での営業活動ができないことが予想されます。
一方、IFAは上述のように、IFAは既存の金融機関からは完全に独立した経営を行っています。提携する証券会社から販売要請やノルマを課されることがないため、真に顧客本位に重きを置いた提案が期待できます。
商品ラインナップ
IFAは複数の証券会社や保険会社等と提携しているケースが多く、それらの豊富な商品ラインナップから顧客に適するものを提案できる強みがあります。
更に、税理士や弁護士といった士業との外部連携をし、商品の提案だけではないサービスを提供しているIFAも存在します。
また、IFAの多くは経験豊富な証券会社出身者が多くを占めるため、契約だけではなく長期的なフォローも期待できます。
まとめ
今回は中小企業の余剰資金の資産運用について解説しましたが、あくまで法人の資産運用は本業があってこそのものです。資産運用に傾倒しすぎて本業に悪影響が出てしまっては本末転倒です。余剰資金の運用は大事な経営判断とはなりますので、目的を明確にし運用方法を策定しましょう。
実際、多くの経営者は本業に集中するためにも資産運用ついては専門家に頼っているケースが非常に多いです。法人の資産運用に精通したアドバイザーに頼ることで、本業を疎かにせず最適な資産運用が可能になります。
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